
親が亡くなった後の手続きは、期限の近いものから順番に片づけます。7日以内に死亡届、そこから14日以内に年金と健康保険と介護保険、それに世帯主の変更。相続の話は、その後で構いません。
この日数を、もう過ぎてから読んでいる人もいます。葬儀と初七日と四十九日が続けば、役所の話が後ろへ回るのは自然なこと。何か月か経ってから動き出しても、この順番はそのまま使えます。死亡届も14日以内の届出も、遅れてから持って行って受け付けてもらえるものばかり。余計にかかるのは、そのあいだに動いたお金を精算する手間と、取り直しになる書類の分だけです。
死亡後にやることの順番は、この仕分けだけで見通しが立つでしょう。全部を自分で覚える必要はありません。市区町村の窓口にも、順番を教えてくれる仕組みが置かれています。
最初の7日は、死亡届だけで足ります
最初の7日のあいだに法律上の期限が来るのは、死亡届の1つです。死亡の事実を知った日から7日以内に、市区町村へ出す決まりになっています。起算点が亡くなった日ではなく、知った日であるという点だけ覚えておいてください。
出す先は、3つの中から選べます。亡くなった場所、親の本籍地、届け出る人が住んでいるところ。親が遠くの病院で亡くなったなら、その病院がある市区町村の窓口でも受け付けてもらえます。用紙は右半分が死亡診断書になっている一体の様式で、医師に書いてもらった1通をそのまま添える形。
窓口へ運ぶのは、届出人でなくても構いません。実際には、葬儀を扱う会社の担当者が持って行く場面が多くなっています。署名するのは親族などの届出人、運ぶのは別の人でよい、という切り分けです。夜間や土日でも預かってもらえる自治体があります。神戸市は区役所の夜間休日窓口で預かり、横浜市も預かったうえで翌開庁日に確認する扱い。お住まいの市区町村がどうなっているかは、葬儀の会社に「この役所は夜間も受け付けますか」と聞いてください。
火葬に進めるのは、死亡届を出した後です。火葬には市町村長の許可が要り、その許可証は死亡届を受理した窓口から交付されます。だから死亡届が先に来る。火葬そのものは、亡くなってから24時間を過ぎるまで行えません。
出す前に、1つだけやっておくといいことがあります。死亡診断書は提出すると返ってきません。コピーを取っておくと、保険金の請求などで後から必要になったときに困らずに済みます。
期限を過ぎたらどうなるか。7日を過ぎても、届出そのものはできます。何か月も経ってから窓口に着いた人も、同じ用紙で受け付けてもらえるもの。戸籍法には、正当な理由がなく期間内に届出をしない者は5万円以下の過料に処する、という条文も置かれています。単位は円で、罰金ではなく過料。ただしこの5万円は条文が定めた上限であって、遅れた人に必ず請求される額ではありません。過料を心配して先延ばしにするほうが、この後ろに続く手続きを止めます。
14日以内のものは、何がありますか
14日以内に片づけるものは、年金、健康保険、介護保険、それに世帯主の変更です。どれも、親が住んでいた市区町村か年金の窓口で扱うもの。
年金は、届出が要らない家もあります
年金は、受け取っていた種類によって日数が違います。厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内。ただし日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合、年金受給権者死亡届の提出そのものが原則として要りません。届出が不要でも、まだ受け取っていない年金が残っていれば請求できます。請求できるのは、亡くなった当時に生計を同じくしていた遺族です。離れて暮らしていた親子でも、生計が同じだったと示す申立書で補える道があります。請求できる人には順位があり、先の順位の人がいるあいだ、後の順位の人は請求できません。届出と請求は、同じ用紙で足ります。止めるのが何か月か遅れているあいだに振り込まれた分は、後から返す形になるもの。咎められる話ではなく、精算の手順がひとつ増えるだけ。通帳を開いて、いつ、いくら入っていたかを控えてから窓口へ行ってください。
健康保険は、届出が要るかどうかが自治体で分かれます
健康保険のほうは、返すところから。国民健康保険や後期高齢者医療の被保険者証、いまは資格確認書という名前になっている場合もありますが、これを市区町村へ返します。親が世帯主だったなら、同じ世帯の人の分もまとめて求められる場合も。ここは自治体で扱いが分かれていて、大阪市は死亡届が出ていれば国民健康保険への届出は要らないとしています。お住まいの市区町村がどちらなのかは、窓口で「死亡届のほかに国民健康保険の届出は要りますか」と聞いてみてください。
介護保険の証は、いつまでに返しますか
介護保険の被保険者証も、返すものの1つです。負担割合証を持っていたなら、それも一緒に。横浜市は本人の住民票があった区の保険年金課が受け付けていて、窓口でも郵送でもオンラインでも手続きできると案内しています。返却の期限を全国一律で定めた根拠は、条文までは確かめられませんでした。川崎市は事由が起きてから14日以内、浜松市はすみやかに、と書き方が分かれています。14日以内をめやすに動きながら、親が住んでいた市区町村に確かめてください。要介護認定を申請している途中だったなら、そのことも窓口で伝える。担当する課が別になっている自治体もあるためです。
世帯主の変更と、遅れたときの過料
世帯主の変更は、住民基本台帳法で14日以内と定められています。必要になるのは、亡くなったのが世帯主で、残る世帯員が2人以上いるとき。父が亡くなって母だけが残る家では、届出そのものが要りません。福岡市も、世帯に属する人が1人になった場合は届出の必要がないと明記しています。実家に誰も残っていない家は、この2つのどちらにも当てはまりません。市区町村の窓口に「この家に住む人はもういませんが、世帯主変更の届出は要りますか」と尋ねてください。受付の仕方は、自治体ごとに違う。横浜市は区役所の戸籍課でしか受け付けず、広島市は郵送を認めていません。遠くに住む子が代わりに済ませようとして詰まるのがここなので、親が住んでいた市区町村に受付場所を先に聞いておくといいでしょう。
こちらにも過料の定めがあります。正当な理由なく届け出なかった場合は、5万円以下。さきほどと同じく上限として置かれた額で、遅れた人がそのまま払わされる額ではありません。死亡届と同じで、遅れても届出はできます。
未支給年金を請求できる人の順位や、誰が何を持って行くかといった細目は、葬儀の後の手続きは、急ぐものと待てるものに分かれます のほうにまとめました。役所へ向かう前に、そちらで持ち物を確かめてから出かけてください。
急がなくてよいものは、相続にまつわる手続きです
相続にまつわる手続きは、今日でも明日でもなく、落ち着いてからで間に合います。葬儀が終わり、四十九日が過ぎてから手をつけても遅くはありません。
ただし、まったく期限がないわけではない。頭に置いておくのは3つです。相続放棄は、自分が相続人になったと知った日から3か月以内。相続税は、亡くなったことを知った日の翌日を起点にした10か月が、申告と納税の期限です。相続登記は、その不動産を取得したと知った日から3年以内に申請しなければなりません。
3か月の数え方が、いちばん自分に置き換えにくいところでしょう。親が亡くなったことをその日のうちに知った子なら、数え始めるのは亡くなった日と考えて構いません。同居していた子も、病院から連絡を受けた子も、たいていはこの形になります。カレンダーで3か月後の同じ日を指せば、それが自分の期限。10か月と3年も同じ日を起点にして、いま手帳に書き込んでしまうのが早いでしょう。
3つとも、月の単位で余裕があるもの。それでも3か月は、葬儀と初七日と四十九日をこなしているうちに過ぎていきます。親に借金があったかもしれないと思い当たる家は、この3か月を先に確かめてください。借金を含めて受け継ぐかどうかを決めるのが、この期限の中身です。
すでに3か月を越えている家もあるでしょう。そこで自分で結論を出してしまわないでください。申述を受け付けるのは、親が最後に暮らしていた地域を受け持つ家庭裁判所です。電話で「3か月を過ぎていますが、相続放棄の申述はできますか」と聞いてください。受け付けるかどうかを決めるのは裁判所の側で、こちらが先に諦める場面ではありません。
何から手をつけるかは 相続の手続きは、必要書類をそろえる前に相続人を確かめます に、税がかかるかどうかは 相続税は、基礎控除を超えた家だけにかかります にまとめました。実家の名義を書き換える3年は、実家を相続したら、どうすればいいですか が受け持つ話です。
葬儀の費用は、親の口座からすぐには出せません
葬儀の費用は、いったん誰かが立て替えて、後から精算する形になる家が多くなります。親名義の預金が、亡くなった時点ですぐには使えなくなるためです。すでに自分の財布から全部払い終えた家でも、精算はこれからの話。払った記録さえ残っていれば、後の話し合いに持ち出せます。
預金が止まるのは、亡くなったこと自体が原因です
遺産分割が終わるまで、相続人が単独で預金を引き出すことはできません。2016年12月の最高裁大法廷の決定で、預貯金が遺産分割の対象に含まれると整理されたことによるもの。生活費でも、葬儀の費用でも、借金の返済でも、理由を問わず同じ扱いになります。親が生きているうちに認知症で口座が動かせなくなる話とは、起きている事柄が別。あちらは本人が元気なうちに手を打てるかどうかの問題で、こちらは亡くなったこと自体が原因です。親が生きているあいだに認知症で口座が使えなくなり、そのまま亡くなったという家もあります。この場合はいきさつが2段になるので、生前の分については 認知症で親の口座が止まったときに、まだ残っている道 のほうを先に読んでから、この節へ戻ってきてください。
いくらまでなら、引き出せますか
まったく出せないわけでもありません。民法に、遺産分割の前でも一定額までなら払い戻せる仕組みが置かれています。1つの口座について、相続が始まった時点の残高に3分の1を掛け、さらにその人の法定相続分を掛けた額まで。ほかの相続人の同意は要りません。法務省が挙げている例では、預金600万円のうち長男が100万円を払い戻せる形になります。600万円の3分の1で200万円、それに長男の法定相続分の2分の1を掛けて100万円、という順の計算です。自分の法定相続分が何分のいくつになるかは相続人の顔ぶれで変わるので、そこは前の節で挙げた相続の手続きの記事に載せた、割合の並びで確かめてください。これは引き出せる額であって、その人の取り分が確定した額ではありません。引き出した分は、後の分割のときに精算されます。同じ金融機関に対しては150万円が上限で、計算で出た額と150万円のうち低いほうまで。この150万円は法務省令が定めた額で、2026年8月に確認した数字です。
きょうだい3人のうち長女が、葬儀の費用を自分の口座から立て替えたとします。この家の長女が単独で引き出せる額は、法定相続分が3人に分かれるぶん、さきほどの例より小さくなるはずです。いくらまで出せるかは、銀行の窓口で「払戻しの制度で、いくらまで引き出せますか」と聞いてください。立て替えた額がそれを超えるなら、超えた分は分割の話し合いのときに戻してもらう形になります。立て替えたときは、日付と金額と使い道を1行ずつ書き残しておいてください。領収書と同じ封筒にまとめておくのが、いちばん確かなやり方。
上限を超える資金がどうしても要るときは、家庭裁判所に仮払いを求める道も残っています。小口は金融機関の窓口、大口は家庭裁判所という2段構え。金融機関に何の書類を出すかは、取引先ごとに違います。まず銀行に「相続の払戻し制度を使いたい」と伝えて、必要書類の一覧をもらってください。
葬祭費は、何か月か過ぎていても申請できます
葬祭費という給付もあります。国民健康保険に入っていた人が亡くなったとき、葬儀を行った人に支払われるもの。額を決めているのは市区町村の条例なので、全国一律ではないところ。葬儀を行ってから2年ほどで時効になるため、何か月か過ぎている家でも、まだ十分に間に合う時期です。市の名前を挙げた実際の額と、会社の健康保険だった場合の埋葬料は、さきほど持ち物の確認先として挙げた葬儀後の手続きの記事に並べました。親が住んでいた市区町村の国民健康保険の窓口に、「葬祭費の申請はまだできますか」と電話で聞いてください。
誰に頼めますか
亡くなった後の手続きは、全部を自分ひとりで抱え込まなくて済みます。順番を組み立てるところは、市区町村の窓口に頼れるからです。
おくやみ窓口という名前で、必要な手続きを洗い出して案内する仕組みを置く自治体が増えました。千葉市はすべての区役所に開設していて、案内だけでなく申請書の作成を手伝い、書類の受理までその場で行います。原則として予約制で、来庁の5開庁日前までに予約する形。横浜市も18区のうち17区に置いていて、予約のときに聞き取った内容から必要な手続きを調べ、当日は一覧表を作って各窓口へ案内します。その横浜市の予約の締め切りは、希望日の4営業日前の16時まで。同じ予約制でも、5開庁日前と4営業日前というように数え方が市で違います。どちらもよその市の話なので、親が住んでいた市区町村には「予約は何日前までにすればいいですか」と聞いてください。
この2つは、どちらも大きな市の例です。設けていない市区町村もありますし、同じ政令市でも全区にそろっているとは限りません。親が住んでいた市区町村のサイトでおくやみと検索するか、代表番号に電話して「亡くなった後の手続きをまとめて案内してもらえる窓口はありますか」と聞くのが早いでしょう。なければ、戸籍の窓口から順に回ることになります。おくやみ窓口がある場合でも利用は任意で、各担当窓口へ直接行っても構いません。
専門職に頼める部分もあります。不動産の名義を変える登記は司法書士、相続税の申告は税理士。報酬は事務所ごとに違うので、この記事では額を出しません。気になるなら電話して「相続の登記を頼むと、全部でいくらになりますか」と先に聞いてください。頼むかどうかを決める前に、市区町村の窓口で全体像を出してもらう。自分でやる部分と任せる部分が見えてから持ち込んでも、遅くはないはずです。
遠方からでも、役所は1日で回りきれます
遠くに住んでいて何度も行けないなら、親の住民票があった役所の代表番号に電話して、「何を持って行けば1日で終わりますか」と先に聞いてください。介護保険の証を返すのも、健康保険の資格を切るのも、世帯主を変えるのも、たいていは同じ庁舎の中で片づきます。持ち物をそろえてから出向けば、往復を重ねずに済むでしょう。判断に迷ったときの出発点も、この窓口。
相続や税の話になると、市区町村の窓口では答えが出ません。戸籍と登記のことは法務局、税のことは税務署が受け持ちます。介護のあいだに世話になった事業所やケアマネジャーへの連絡がまだ残っているなら、そちらの行き先は 介護の相談はどこにすればいいですか にまとめました。
判断に迷う場合は、相談できる窓口があります。

