相続税は、基礎控除を超えた家だけにかかります

相続税は、多くの家ではかかりません。亡くなった人の財産の合計が基礎控除という枠に収まっていれば、税額は出ませんし、申告も要らない。確かめるのは税率ではなく、この枠を超えるかどうかのほうです。

基礎控除は、3,000万円に法定相続人1人あたり600万円を足した額になります。子2人が相続する家なら4,200万円。預金と実家を合わせてもここに届かなければ、税務署へ行く用事は起きません。

この記事で渡すのは、超えるかどうかの物差しと、超えそうなときの行き先だけです。税率表は載せませんし、個別の税額も計算しません。財産の中身と分け方で答えが動くところなので、そこは税務署か税理士の仕事。

そもそも、うちはかかるのですか

相続税がかかるかどうかは、財産の合計が基礎控除を超えるかどうかだけで決まります。相続税がいくらからかかるのか、その線引きはここ1本きり。

税額が出たのは、10軒に1軒ほど相続税の税額が出た人 10.4%2024年に亡くなった人について国税庁が2025年12月に公表これは、税額が出た人の割合です申告した人の割合ではありません

国税庁がまとめた令和6年分、つまり2024年に亡くなった人についての集計では、相続税がかかったのは10.4%となっています。公表は2025年12月。10軒のうち9軒近くでは、税額が出ていません。ただしこの10.4%は、税額が出た人の割合です。申告した人の割合ではありません。特例を使って税額をゼロにするために申告した人は、この数字の外側にいます。申告だけが要る家は、10.4%より多いということ。

財産の合計には、保険金も入ります

では、財産の合計とは何を足したものか。現金、預貯金、有価証券、土地、家屋。宝石も貸付金も特許権も著作権も、お金に見積もれるものはすべて入ります。見落とされやすいのが、死亡退職金と、親が保険料を払っていた生命保険の死亡保険金です。本来の遺産ではありませんが、みなし相続財産として同じように数えます。

保険金が入ったからといって、それだけで枠を超えるとは限りません。死亡保険金には、500万円に法定相続人の数を掛けた非課税の枠が別に用意されています。これは保険金から差し引ける額で、受け取れる上限ではありません。相続人が3人なら1,500万円まで、この枠で消えます。

差し引けるものと、引けないものがあります

差し引けるものは、ほかにもある。借金は財産から引けますし、葬式にかかった費用も引けます。火葬や埋葬、納骨にかかった費用、遺体や遺骨の回送、通夜など葬式に欠かせない費用、お寺への読経料といったお礼。これらは差し引ける側です。一方で、香典返しの費用、墓石や墓地を買ったり借りたりした費用、初七日などの法事の費用は差し引けません。判定に使うのは、プラスからマイナスを引いた後の額になります。

自分の家の財産を正確に出すのは、思ったより難しい。だからここでは、超えそうかどうかの見当をつけるところまでにしておきます。実家があって預金もそれなりに、という家は、超えるかどうかを税務署に聞いてください。

基礎控除は、3,000万円と相続人の数で決まります

基礎控除の額は、3,000万円に、法定相続人1人あたり600万円を足したものです。相続税の基礎控除は、この計算式ひとつで出ます。どちらの数字も、2026年8月に確認したものです。

超えた分にだけ、かかります3,000万円 + 600万円 × 相続人の数基礎控除の枠。2026年8月時点子2人が相続する家の例財産の合計 4,300万円借金と葬式費用を引いた後の額差し引く枠 4,200万円3,000万円 + 600万円 × 2人税の計算に乗るのは 100万円はみ出した分だけです4,300万円の全部に、かかるのではありません

子2人が相続するなら、3,000万円に600万円の2人分を足して4,200万円。母と子2人の3人で相続するなら、3,000万円に600万円の3人分で4,800万円になります。この額は、財産の合計から差し引く額です。超えたら財産の全部に税がかかる、という仕組みではありません。4,200万円の枠に対して財産が4,300万円だったなら、税の計算に乗るのは、はみ出した100万円のほう。そこから先の計算は段階を踏むので、この記事では立ち入りません。

つまずきやすいのは、人数の数え方です。配偶者は、常に法定相続人に入ります。そこへ加わるのが、第1順位の子。子が先に亡くなっていれば、その子である孫が代わりに入って、人数はその分だけ増えます。第1順位に誰もいない家では、父母や祖父母が第2順位として繰り上がる。そこも空いていれば、兄弟姉妹が第3順位で入ります。代襲相続で人数が増えれば、そのぶん基礎控除の枠も広がる。

もう2つ、押さえておくと迷いません。相続放棄をした人がいても、基礎控除の計算では放棄がなかったものとして数えます。放棄したから枠が縮む、ということは起きない。養子は人数に上限があり、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までを数に入れられます。

超えるかどうかを決めるのは、実家の土地の評価です

実家の土地があるからといって、それだけで基礎控除を超えると決まったわけではありません。相続税がかからない側に戻る家があるのは、土地の評価を下げる特例が置かれているからです。

小規模宅地等の特例といいます。亡くなった人が住んでいた宅地について、330平方メートルまでの部分の評価を80%減らせる仕組み。評価が5分の1になるので、実家の土地が枠を押し上げていた家では、判定がひっくり返ることもあります。面積を超えた部分は、この減額の対象になりません。事業に使っていた宅地や、貸していた宅地には別の面積と割合が定められています。

使えるかどうかは、要件を1つずつ当ててみないと決まりません。誰が取得したか、同居していたか、申告期限まで持ち続けるかといった要件が細かく置かれています。要件を1つ外すと、特例そのものが使えなくなる。同居していない子が継いだ実家や、誰も住まなくなった実家が、それだけで対象から外れると決まっているわけでもありません。実家があるなら、税務署か税理士に「この土地で小規模宅地等の特例は使えますか」と聞いて確かめてください。

そしてもう1つ、この節でいちばん大事なところ。この特例は、相続税の申告書を出さないと使えません。どういうことかは、次の節に書きます。

相続した実家を売るのか、住むのか、貸すのか。税の話とは別に、名義を書き換えるところから考えることになるので、その順番は 実家を相続したら、どうすればいいですか を見てください。

税額がゼロなら、申告も要りませんか

税額がゼロでも、相続税の申告書を出さなければならない家があります。特例を使って基礎控除以下に下げた場合が、それ。

申告が要るのは、どちらですか特例を使わずに、枠の中申告も納税も要りません税務署へ行く用事は起きません特例を使って、枠の中に下げた申告書を出さないと、特例が使えません小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減税額がゼロでも、出す家があります

原則は単純です。財産の合計が基礎控除以内なら、申告も納税も要りません。税務署へ行く用事も、書類をそろえる手間もない。

小規模宅地等の特例は、申告書を出して初めて使えます

ひっくり返るのが、特例を当てにしている場合です。小規模宅地等の特例は、相続税の申告書に適用を受ける旨を書き、計算の明細書や遺産分割協議書の写しなどを添えて初めて使えます。申告書を出さなければ、特例そのものが使えません。使えなければ土地の評価は下がらず、結果として税がかかります。特例で税額がゼロになる家ほど、申告を忘れたときの痛手が大きい。

配偶者の分がゼロでも、申告書は出します

配偶者の税額軽減も、同じ作りです。配偶者が受け取る分については、1億6千万円と配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い額まで、相続税がかかりません。これは配偶者が受け取る分についての枠であって、家全体の非課税枠ではない。そして使うには、税額軽減の明細を書いた申告書に、戸籍謄本や遺産分割協議書の写しなどを添えて出す必要があります。母が全部を相続して税額がゼロになる家でも、申告書は出す。ここを取り違える家が、いちばん多いところです。先に配偶者を送っていて、子だけが相続する家では、この枠は出てきません。効くのは、配偶者が受け取る分がある相続だけ。

見分け方は、ひとつだけ。特例を使わずに基礎控除以下なら、申告は要りません。特例を使って初めて下がるなら、申告が要ります。どちらか分からないときは、その状態のまま税務署に持ち込んで構いません。

かかりそうな家が先に押さえるのは、10か月です

相続税の申告と納税は、亡くなったことを知った日の翌日から数えて10か月以内に終える決まりです。

1月6日に亡くなったなら、その年の11月6日が期限になります。期限の日が土日や祝日にあたるときは、翌日にずれる。納税も同じ日までなので、現金をどう用意するかを早めに考えることになります。すでに何か月か過ぎている家は、亡くなった日から10か月後の日を先にカレンダーへ書き入れて、そこまでの残りを数えてください。

出す先は、亡くなった人の住所地を所轄する税務署です。相続人が住んでいる場所の税務署ではありません。東京の子が、地方に住んでいた親の申告を自分の近くの税務署に出そうとしてつまずく。遠方なら、郵送や電子での提出も含めて、先に所轄の税務署へ確かめておくといいでしょう。すでに10か月を越えている家もあります。それでも、終わったと自分で判断しないでください。行き先は変わらず、親の住所地を所轄する税務署。窓口へ「10か月を過ぎてしまいましたが、これから申告できますか」と持ち込んでください。

相談に行くときは、手元にあるものを持って行けば足ります。財産の一覧、戸籍、それに固定資産税の通知の3つ。財産の一覧に決まった様式はないので、通帳、証券会社からの書類、保険証券を並べて書き出すだけで構いません。固定資産税の通知は、毎年4月ごろに市区町村から届く課税明細書のこと。土地の評価に要ります。そこに載っている額をそのまま財産の合計に足していいのかどうかは、税務署に「土地の評価は、この課税明細書の額でみればいいですか」と聞いてください。通帳の見当たらない銀行があるなら、その金融機関に「亡くなった親の口座があるか調べてもらえますか」と頼めます。戸籍は、相続人が何人になるかを確かめるためのもの。基礎控除の額そのものが、そこで決まります。戸籍を集めるところから、相続人が何人になるかを確かめるところまでの手順は、相続の手続きは、必要書類をそろえる前に相続人を確かめます を開けば一度に追えるはずです。

税額がいくらになるかは、この記事では出しません。課税される部分を法定相続分で割って、それぞれに税率をあてて、また足し合わせるという段取りを踏むためです。財産の中身と分け方で答えが動くところなので、数字が要るなら税理士に見てもらってください。

申告が要るかどうかは、電話でも見当がつきます

相続税がかかるかどうかで迷ったときは、税務署へ電話して直接聞けます。国税相談専用ダイヤルに電話すると、全国の税務署の職員が応じてくれる仕組み。受付は平日の8時30分から17時までで、土日祝日と年末年始は休みです。書類を見ながらでないと答えが出ない相談は、所轄の税務署での面接になり、事前の予約が要ります。

税を持ち込む先は、ここまで。介護の相談はどこにすればいいですか が扱うのは介護の側です。介護のほうで宙に浮いたままの用件があるなら、そのページから探せます。

判断に迷う場合は、相談できる窓口があります。

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